ウェブらしさを考える本

 何年か前に読もうと思ってそのままになっていたが、急に読む気になった。
 著者のひとりの大向一輝先生は、国立情報学研究所コンテンツ科学研究系准教授をされており、論文情報データベース「CiNii」の開発、運営に携わられている。
 自分は、図書館に勤めていることもあり、CiNiiは使った経験があり、そのシステムを開発、運営された方の著作ということで興味を持った。
 ウェブを発明したティム・バーナーズ=リーの紹介から始まるウェブの普及、ブログやTwitter、FacebookといったSNSの特徴、Yahoo!やGoogleのトップページの違いなど、知っていることもあれば、知らなかったこともあり、楽しく読めた。
 ウェブの黎明期というとちょうど自分が大学を卒業して情報系の会社に就職した頃で、パソコンやワークステーション、汎用機を結ぶネットワークはあったものの、まだ外部のウェブサイトは閲覧できていなかったように思う。
 就職して1、2年が過ぎた頃、プロキシサーバ経由で外部のウェブサーバにブラウザMosaicでアクセスしていた。NECのPC-9800シリーズにはハードとしてネットワーク機能が無かったので、拡張スロットにイーサーネットカードを装着してインターネットにつなげていた。
 ブラウザは、Mosaicが標準だったが、ネットワーク関連企業がブラウザを制作して、製品に添付し、その結果、様々なブラウザが存在したという記憶がある。
 NECなんかもPC-VANというパソコン通信サービスを運営していたが、独自のブラウザを公開していたような記憶がある。
 この本にあるウェブの黎明期の紹介を読んで、以上の懐かしい記憶が蘇った。当時、Yahoo!すら有名でない時期があって、本屋で電話帳のようなウェブサイトのアドレス帳が売っていて購入した記憶もある。
 今は、レンタルサーバを借りてウェブサーバを立ち上げてホームページを公開するということは、そんなに難しいことではなくなったが、当時は、ウェブサーバの概念すら知らなかった。
 モデムで電話回線を使って接続するニフティサーブのようなパソコン通信は、既に人気があったが、ウェブのオープン性やプロバイダの定額制、ハードウェアの進化であっという間に普及した。
 この本では、ブログ、TwitterFacebookなどのSNSの特徴がよく書かれていて、使ったことのある人ならその特徴を再認識すると思う。技術的なことではなく、コミュニケーションの方法にどのような特徴があるのかが書かれている。
 Yahoo!の場合は、なるべく長く滞在してもらうことを目的としたサイトで、Googleは、なるべく早く自サイトを離れて、検索結果のリンク先に飛んでいって欲しいデザインになっているとの記載があって、なるほどと思った。
 CiNiiは、Googleに近いポジションになっているとの記載もあり、図書館のOPACも同じ性質のものなのでそうあるべきだと思う。
 この本の終わりには、なんと出版元の丸善出版のサイトで全文が公開されているとの記載があった。書籍とウェブが共生することができるのかという実験的な試みで公開されている。
 奥付をみると平成24年ということで7年前に出版された本になる。Google+のことも紹介されていたが、2019年4月2日にサービスが終了してしまった。サービス終了のニュースを聞いた時は、本当に驚いたが、これからも色々なウェブサービスが生まれて、消えていくものも沢山でるのだろうと思う。
 それから二つの「集合知」、Wikipediaに代表される集団的知性とGoogleのページランクに代表される「群衆の叡智」の解説がとても興味深かった。

ウェブらしさを考える本 (丸善ライブラリー―情報研シリーズ)
大向 一輝 池谷 瑠絵
丸善出版
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